Miwako Itoh
出逢いが導く未来への階段。
共感、協働、化学反応。
世界が変わった! そう実感したのは数年前です。日本のビジネス界がようやく、ビッグデータに飛びつくようになった。それは、コップから水があふれ出すような感覚でした。事業成果や業務実態を数字で可視化、分析し、蓄積したデータを活用して、製品サービスの付加価値向上、や業務改善に役立てる<ビジネスアナリティクス>という概念が通用するまで、かなりの時間を要しました。私は、マーサーにサーベイを通じて蓄積されているデータを活用して多くの新しい価値をお客様に提供したいと考えて、転職してきたんです。今は、マーサーの報酬サーベイデータを活用した分析レポートを作成すると共に、データを中心としたソリューションを開発することが主なミッションです。
状況を瞬時に読み取り、数字に置き換えて目標値を設定する左脳の働きは、男性的といわれる所以かもしれません。直感的に物事を推し測り、情報を発信してアイデアを生み出すのは、右脳の働き。女性ですから、どちらかというと感覚能力の方が優れているのは確かです。
お客様には、数字が教えてくれることを、私自身の言葉でダイレクトにお伝えします。都合が悪いことも、きっぱりとです。難題を抱えるクライアントさんにとって、組織改革は大きな壁。できれば避けて通りたいと思うのも当然です。でも私はその壁を先に登って手を差し出すようなことはしません。「登りきれないなら、止めなさい」とも思う、スパルタです。だから、自分にも厳しい。体重計の数字が明らかにプラスを示しているのに、気分や体調のせいにして、見なかったことにするのは嫌なんです。ましてや、組織人事は従業員の将来を左右する一大事です。数字がアラートを出しているなら、潔く、現実を直視してほしいんです。会社も体と同じように、基礎体力を上げるための究極論としては、セルフメディケーションが大事。手取り足取りで面倒をみるということではなく、共感、協働が健全なあり方だと思います。
今、率いているチームは、みんな若くて個性的。いわば、異能集団です。社外の交流でも、異能同士が触れ合うと、火花が散るような化学反応が起きますし、お客様との出会いもそうです。物事を生み出す人。それを分類し、組み合わせる人。様々な仕事感覚に寄り添いながら、ニーズに応えていくことが好きです。そうして私も日々、成長させてもらっています。
毎日がまっさらの1ページ。
若い頃は、お客様と肩を組んでゴールまで二人三脚というスタンスがプロフェッショナルだと思っていました。コンサルタントは会社を救うスーパーマン。求められれば、どこまでも行くし何でもする。飲まず食わずの徹夜も厭わないという時代もありました。期待値を超えることに命がけで、いつも鎧を着て、チームのメンバーにも決死の戦いを強要していました。でも、時々しんどくなってトイレで泣いたり、中島みゆきを聴きながらソファで寝落ちしたり。自分でも面倒臭い女だったなぁと思います。
時折、亡くなった母の面影を自分の中に垣間見ることがあります。彼女は、娘の私から見ても美しくチャーミングな人でした。オードリー・ヘプバーンのようにほっそりとした体つきで、ファッションセンスも抜群。母親というより、憧れの女性という感じでした。でも私には厳しかった。幼い頃に父が他界したため、仕事と家庭を両立していた母は、全部完璧が当たり前。できない言い訳は許されませんでした。「一人でも生きていける仕事をしなさい」と言われ続け、後ろ姿を追いかけているうちに母と同化してしまったんです。折れない生き方が、私の中にしっかり根付いてしまいました。その母が亡くなった時は、乗り越えるのが大変で。辛くて、仕事を逃げ場にしていたほど。その一方で、あぁ、これでようやく解放されたという想いもありました。そして、今をどう生きるか。これからどうすべきか。性別や肩書きなど、自らを縛り付けるようなカテゴライゼーションは一切気にならなくなりました。私は私のやり方で、このまま行きます。それが一番、心地良いので。