マーサージャパン、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」分析結果を発表 

 

2024年9月4日

組織・人事、福利厚生・ウェルビーイング、資産運用のグローバルリーダー、マーサーの日本法人であるマーサージャパン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長 草鹿 泰士)は、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」分析結果を発表しました。

常時雇用する労働者が301人以上の企業に対して男女の賃金差異の公表が義務化されてから約2年が経過しました。昨年に引き続き、マーサージャパンは、厚生労働省「女性活躍推進企業データベース」の2024年7月8日時点のデータを基に、最新の日本の企業における男女の賃金差異について分析を行いました。

男女の賃金差異(正規雇用/平均)

昨年(2023年7月6日時点)と今年(2024年7月8日時点)の企業の男女の賃金差異(男性の賃金を100とした時の女性の賃金)を比較すると、常時雇用労働者301人以上の全企業平均で74.9%と、昨年の74.3%から0.6%ほど差異が縮まっています。この変化は、データ公開企業が大幅に増加したこと(2023年5,520社、2024年12,414社)による母集団の変化による可能性もあります。そこで、前回の集計と今回の集計いずれもデータの登録があった企業(4,387社)に絞り、同じ母集団で改めて平均を比較したところ、正規雇用の男女賃金差異は昨年の74.07%から74.41%という結果となり、縮小幅は0.3%にとどまりました。

業種別の傾向も昨年と大きく変わりませんでした。特徴として、保険・銀行などの金融業では差異が大きく、教育・医療業で差異が小さい傾向が見られます。

男女賃金差異解消のためのアクション検討に向けたデータ活用

多くの企業が男女賃金差異情報の2回目の公表を終えていると想定されますが、自社の数字が同業種や競合他社と比較してどのような位置づけにあるのか、厚労省のデータをベンチマークとして活用することができます。

厚生労働省のデータベースの規模は拡大しており、これまでより詳細なベンチマークが可能になりつつあります。男女賃金差異情報の公表の次のステップとして、自社および他社のデータを見ることで、自社の現状を把握し、さらには差異の縮小に向けてどのような施策を講じていくかのヒントを得られます。多くの企業が男女賃金差異の主要因として挙げていた「男女の職位差」に着目し、「女性の管理職への昇進しやすさ1」と「男女賃金差異」の関係を可視化することで、業種別の女性活躍推進の状況を次のように整理しました(図1)。

 

1 本分析のために「女性の管理職への昇進しやすさ」を指標としてマーサーで定義した。女性活躍推進データベース上で各社が公表している女性管理職比率を、正社員に占める女性の割合で除して個別企業の従業員分布差を補正したもの。女性管理職比率÷女性従業員比率=「女性の管理職への昇進しやすさ」と呼ぶ。例えば、女性管理職が10%ずついる2つの会社A社とB社は同じように見えるが、A社の女性従業員比率が50%であれば、女性が管理職に昇進する可能性は実際には10%÷50%=20%に過ぎない一方、B社の女性従業員比率が10%であれば、この会社では女性社員も男性社員も管理職昇進のチャンスは平等と言える。

 

図1. 業種別比較(従業員数301人以上)

まず、業種別の傾向として2023年のレポートと同様、女性の管理職への昇進しやすさと男女の賃金差異には正の相関があり、女性が昇進しやすい企業ほど、賃金差異が小さい傾向にあります。また、業種間の比較では多少のばらつきはあるものの、非製造業・サービス業は製造業に比べ女性が管理職へ昇進しやすく男女の賃金差異が小さい傾向が見られました。

同様のグラフを企業単位で数字をプロットし作成することで、より具体的に自社と他社と比較できます。上記グラフの業種の内、男女賃金差異の平均値が全社平均(74.9%)に近い業種・上回る業種・下回る業種それぞれの状況をさらに詳しく分析します。

 

図2. 自動車業種(従業員1,001人以上)における企業別比較

次に、男女賃金差異の業種詳細平均が全社平均に近い「自動車」業・1,001人以上の企業の分布を掘り下げます(図2)。例えば、ある自動車メーカーA社(女性の管理職への昇進しやすさ:30.0%、正規雇用社員の男女賃金差異:75.0%)のデータを同グラフにプロットすると、A社は同業種内では女性の管理職への昇進しやすさ・正規雇用社員の男女賃金差異ともに「自動車」業種・1,001人以上の企業の平均(女性の管理職への昇進しやすさ:28.2%、正規雇用社員男女賃金差異:73.2%)を上回っていることが確認できます。さらには、自社よりも女性が管理職に昇進しやすく男女賃金差異が小さい企業名が確認できるため、自社の女性活躍推進施策を検討する際のベンチマーク企業の選定に役立てられます。また近年では、製造業が製品に関連するソフトウェア開発やITサービスを事業に取り込むケース等、事業が多様化している場合もあるため、事業構造の変化に合わせて比較対象とする業種や企業も見直しをしながらベンチマークを実施することが望ましいでしょう。

 

図3. 保険業種(従業員301人以上)における企業別比較

続いて、業種別の比較において男女賃金差異が大きい業種である「保険」業・301人以上の企業分布を見てみます(図3)。多少のばらつきや数の違いはあるものの、日系企業と外資系企業を比較すると、外資系企業の方がより女性が管理職に昇進しやすく、男女賃金差異も小さいように見えます。保険業界の男女賃金差異が大きい主な要因に、一般職・総合職等の男女の雇用区分の違いによるものが挙げられますが、各社の数字の違いは、性別の違いと雇用区分が強く紐づいている日本的な雇用形態を残している企業と、そのような区分を設けない企業の違いとも考えられます。どのような特徴を持つ企業がグラフのどこに位置しているのかを把握できれば、自社が目指すべき姿が見えてくるかもしれません。

 

図4. 医薬品業種(従業員1,001人以上)における企業別比較

外資系企業と日系企業の違いに注目すると、その違いがより顕著に見られたのは「医薬品」業です(図4)。医薬品業は、業種別の集計において男女の賃金差異が全社平均よりも小さい業種です。「医薬品」業・1,001人以上の企業の分布を見ると、外資系企業と日系企業の分布が明確に分かれています。外資系製薬企業は、グローバル主導で賃金差異に対するガバナンスされている場合が多く、賃金差異の算出だけでなく、差異縮小のための賃金調整なども行われています。一方、日系製薬企業はそこまでの対応はしていないケースが多く、そのスタンス・体制の違いが結果にも表れていると言えます。全体で見ると男女賃金差異が小さく女性活躍が進んでいる業種でも、個別に見ると各企業の属性・状況により結果に差が生じていると分かります。

このように、同業種の中でも企業によって女性登用状況に違いがあり、中でも外資系企業にできていて日系企業にできていないことがあるという現状は、業種ごと・企業ごとの具体的な女性活躍推進施策を見ていくにあたり価値のある事実と言えるでしょう。

本レポートでは、昨年に引き続き、業種別・企業規模別の男女の賃金差異水準を明らかにしました。また、男女の賃金差異と女性の管理職への昇進しやすさの関係を表したグラフを利用し、いくつかの業種に注目してより具体的にデータを読み解く方法について紹介しました。本内容が、皆様の組織におけるDEI・女性活躍推進の取り組みを検討する際の参考になれば幸いです。


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