マーサー 「グローバル年金指数ランキング」(2024年度)を発表 

人口動態が変化する中、退職金制度を強化する機会が強調される

2024年10月21日

  • 首位にオランダ、2位にアイスランド、3位はデンマーク
  • アジアではシンガポールが最も高く5位、香港特別行政区と中国がこれに続いた
  • 2024年度、日本は48ヵ国中36位という結果に

 

マーシュ・マクレナン(NYSE: MMC)の一員であり、組織・人事、福利厚生・ウェルビーイング、年金・資産運用のグローバルリーダーのマーサーと CFA 協会は、第 16 回マーサーCFA協会グローバル年金指数の詳細を発表した。 

オランダの退職所得制度が首位を守り、アイスランドが2位、デンマークが3位となった。アジアでは、シンガポールがトップの座を維持し、2024年には7位から5位に躍進した。

マーサーの社長兼CEOであるPat Tomlinsonは、次のようにコメントする。

「出生率が低下し、平均余命が伸びている世界では、退職所得制度が重要な役割を担っています。私的・公的退職所得制度の強力な整合性を確保し、従業員の適用範囲を拡大し、高齢になっても働きたい人のワークフォースへの参画を促進することは、退職者の長期的な成果を改善するためのほんの一例に過ぎません」

DC加入者が最良の退職結果を得られるよう支援する

世界中の退職金制度で、確定給付型(DB)から確定拠出型(DC)へと移行が進んでいる。本レポートでは、年金制度と個人の双方にとってのDC制度に関連する機会と課題を探る。

CFA協会の会長兼CEOであるMargaret Franklin氏は、以下のように述べている。

「確定拠出年金への移行が進むにつれ、ファイナンシャルプランニングに多くの課題が生じ、それは明日の退職者の肩に重くのしかかっています。DCでは、個人の財務状況に大きな影響を与える可能性のある複雑なファイナンシャルプランニングの決断が求められます。本指標は、個人に対する長期的な財務保障とアドバイスを提供する上で、まだギャップが残っていることを再認識させるものです。倫理とその資格を兼ね備えたファイナンシャルアドバイザーの必要性が改めて浮き彫りになりました」

人々が長生きするにつれ、DC制度における柔軟性の向上と個別化が求められる。定年退職の概念は変化しており、多くの個人が徐々に完全な退職に移行したり、定年退職後に別の役割で再び職場に戻ったりしている現状がある。DC制度はまた、従来のDB制度から取り残されがちだったギグワーカーや契約社員にも多大なメリットを与える。 

マーサーのシニアパートナーであり、本調査の筆頭著者であるDavid Knox博士は、次のように指摘する。

「退職者の経済的ニーズと彼らの仕事に対する期待の変化に対応するためには、大幅な退職所得制度の改革が必要です。退職金制度をより強固なものにする、唯一無二の解決策は存在しません。今こそ、政府、政策立案者、年金業界、雇用主が協力し、高齢者が尊厳をもって扱われ、現役時代と同様のライフスタイルを維持できるようにする時です」

また、マーサージャパンで年金コンサルティング部門 シニアコンサルタントの漆山綾香は以下のように述べている。

「多くの国でDB制度からDC制度へのシフトが進んでいますが、公的・私的年金を合わせた資産残高比で見ると、日本のDC比率はまだ低水準です。その背景として、対GDP比で私的年金の資産が少ないこと、DC制度の拠出枠が小さいこと、従業員の運用リスクを負うことに対する慎重な姿勢などが挙げられます。企業型DC制度における投資教育を通じて、金融リテラシーを養いライフプランニングへの理解を深めることは、従業員の不安を払拭するだけでなく、ファイナンシャルウェルビーイングを高め、多様な選択肢から自らの働き方や老後資産形成の方法を選び取る原動力となり得ます」

数字で見る

総合指数が最も高かったのはオランダ(84.8)で、アイスランド(83.4)、デンマーク(81.6)が僅差で続いた。オランダの年金制度は、DB方式からより個別的なDC方式へと移行しており、引き続き最良の制度として評価された。この制度はまた、強固な規制を特徴としており、加入者に対し年金に関するガイダンスを提供している。

MCGPIは、十分性、持続性、健全性のサブ・インデックスの加重平均値を用いている。各指標で最も高い値を示したのは、オランダの「健全性」(86.3)、アイスランドの「持続性」(84.3)、フィンランドの「十分性」(90.8)だった。 

2023年との比較では、中国、韓国、タイ、フィリピンも順位を上げている。今年新たに加わったベトナムは、アジアの中で6位と注目に値する。香港特別行政区は年金制度の十分性が引き続き優れており、アジアで最高の87.5点を維持した。中国、マレーシア、台湾、韓国、タイも年金制度の健全性スコアが大幅に改善した。タイは、2023年(46.4)と比べ年金指数のスコアが3.6ポイント改善し、これはタイの退職所得制度を強化に向けた協調的な取り組みを反映している。

長寿化、高金利、介護費用の上昇によって、年金制度を支えるための政府予算への圧力が高まっており、今年は全体的に点数がやや低い結果となった。中国、メキシコ、インド、フランスを含むいくつかの制度が、近年年金改革に取り組んでいる。なお、本年9月に発表された中国における最新の年金改革は、指数には反映されていない。

マーサー CFA協会 グローバル年金指数ランキング(2024年度)

No.

制度

総評価

総指数

十分性

持続性

健全性

1

オランダ

A

84.8

86.3

81.7

86.8

2

アイスランド

A

83.4

82.0

84.3

84.4

3

デンマーク

A

81.6

84.0

82.6

76.3

4

イスラエル

A

80.2

75.7

82.6

84.1

5

シンガポール

B+

78.7

79.8

74.3

83.0

6

オーストラリア

B+

76.7

68.4

79.5

86.1

7

フィンランド

B+

75.9

77.0

64.2

90.8

8

ノルウェー

B+

75.2

77.2

63.6

88.3

9

チリ

B

74.9

71.2

70.9

86.5

10

スウェーデン

B

74.3

75.2

73.7

73.6

11

英国

B

71.6

75.7

61.5

79.3

12

スイス

B

71.5

66.0

71.4

80.4

13

ウルグアイ

B

68.9

84.0

46.6

76.1

14

ニュージーランド

B

68.7

64.8

64.9

80.2

15

ベルギー

B

68.6

81.8

40.1

87.4

16

メキシコ

B

68.5

73.8

63.4

67.1

17

カナダ

B

68.4

67.0

63.8

77.1

18

アイルランド

B

68.1

73.6

52.8

80.5

19

フランス

B

68.0

84.8

43.4

75.7

20

ドイツ

B

67.3

81.1

45.8

75.3

21

クロアチア

B

67.2

66.8

57.4

81.7

22

ポルトガル

B

66.9

83.4

34.6

85.7

23

アラブ首長国連邦

C+

64.8

77.1

43.3

75.3

24

カザフスタン

C+

64.0

45.8

73.1

80.4

25

香港特別行政区

C+

63.9

51.5

61.1

87.5

26

スペイン

C+

63.3

82.9

30.7

77.6

27

コロンビア

C+

63.0

63.9

57.4

69.5

28

サウジアラビア

C+

60.5

61.1

58.0

62.9

29

アメリカ

C+

60.4

63.9

58.4

57.5

30

ポーランド

C

56.8

59.2

45.2

69.4

31

中国

C

56.5

65.2

37.8

69.1

32

マレーシア

C

56.3

44.5

54.6

77.4

33

ブラジル

C

55.8

70.4

31.0

67.3

34

ボツワナ

C

55.4

39.7

52.0

85.2

35

イタリア

C

55.4

68.2

25.1

77.2

36

日本

C

54.9

57.1

47.1

62.1

37

ペルー

C

54.7

55.3

46.9

64.7

38

ベトナム

C

54.5

56.8

41.3

69.3

39

台湾

C

53.7

46.2

51.9

68.2

40

オーストリア

C

53.4

67.2

22.0

75.2

41

韓国

C

52.2

40.5

52.4

70.5

42

インドネシア

C

50.2

38.1

50.4

69.3

43

  タイ

C

50.0

50.2

43.8

58.2

44

南アフリカ

D

49.6

34.7

48.0

75.7

45

トルコ

D

48.3

48.3

32.2

70.8

46

フィリピン

D

45.8

41.7

63.4

27.7

47

アルゼンチン

D

45.5

61.5

29.4

42.3

48

インド

D

44.0

34.2

44.9

58.4

マーサーCFA協会グローバル年金指数について

グローバル年金指数は、世界各国の年金制度のベンチマークとして、各制度の弱点を浮き彫りにし、より充実した、持続可能な年金給付を提供するために改革すべき領域を示している。2024年度においては、全世界48の退職所得制度を比較し、世界人口の65%をカバーしている。2024年は、ベトナムの制度が新たに加わった。各国の制度の総合指数は、「十分性(Adequacy)」、「持続性(Sustainability)」、「健全性(Integrity)」に大別される50以上の項目から構成され、これら3つのサブ指数を加重平均して算出している。グローバル年金指数は、世界的な投資専門家団体であるCFA協会が主催し、モナシュ大学モナシュビジネススクールに属するモナシュ金融研究センター(MCFS)と、組織・人事、福利厚生・ウェルビーイング、年金・資産運用のグローバルリーダーであるマーサーが協力した研究プロジェクトである。

マーサーCFA協会グローバル年金指数の詳細も併せてご確認ください。

CFA協会について

CFA協会は投資専門職の卓越性と資質の基準を設定する投資専門家の世界的な団体です。同協会は投資市場における倫理行動の推進者であり、世界の金融業界における知識の発信者として高い評価を得ています。投資家の利益が優先され、市場が最良の状態で機能し、経済が成長する環境を生み出すことを最終目標としています。また、世界の160の国と地域で200,000名を超える会員(CFA資格者)10のオフィスを有し、160のメンバーソサエティが所属しています。
詳細はwww.cfainstitute.org  、ツィッター(@CFAInstitute)またはLinkedin をご覧ください。

モナッシュ金融研究センター(MCFS)について

モナッシュ金融研究センター(MCFS)は、オーストラリアのモナッシュ大学ビジネススクールの研究センターで、金融業界における実践上の研究課題に学術的厳密さを持たせることを目指しています。また、エンゲージメントプログラムを通じて、学者と実務家の間の双方向の知識交換を促進しています。同センターの研究テーマは多岐にわたっていますが、現在は退職後に向けた資産形成、持続可能な金融、技術のディスラプションなど、資産運用業界に関連する問題に重点を置いています。

マーサーについて

マーサーはより輝かしい未来は築くことができるものと信じています。私たちはクライアントと共に、仕事そのものを再定義し必要な改革に導き、退職金制度や年金の投資成果を再構築します。そして、真の健康とウェルビーイングへと導くビジョンを掲げています。全世界約20,000名のスタッフが48ヵ国をベースに、130ヵ国でクライアント企業と共に多様な課題に取り組み、最適なソリューションを総合的に提供しています。マーシュ・マクレナン(NYSE:MMC)の一員として、日本においては45年にわたる豊富な実績とグローバル・ネットワークを活かし、あらゆる業種の企業・公共団体に対するサービス支援を行っています。