人材マネジメントに求められる創造的破壊 

Two attractive caucasian girls in office using laptop with creative digital pattern ©peshkova - stock.adobe.com

14 3月 2019

近年情報化技術が著しく発展し、AI、IoT、クラウドなど、様々な技術が実用化され、ビジネス活動だけでなく、我々の生活の中でも利用されている。今後実用化が見込まれる自動運転、デジタル家電、無人店舗など、私たちの身の回りにも様々な変化が起こっている。

自動運転技術が実用化されれば、決まったルートを運行するバスの運転手が必要なくなるのでは?デジタル家電が進歩すると自宅の掃除を自動的にやってくれるのでは?など、近い将来、人間が行ってきたことを完全に機械が代替(更に高度化)する時代がやってくるのだろうと思われる。

このようにデジタル化技術が創造的破壊をもたらすという中で、人材マネジメント分野においても創造的破壊をもたらすものが出てきているだろうか?

HR Tech、Digital HR、People Analyticsなど、様々な取組・サービス・製品が登場しているものの、人材マネジメントの有り方・運用が抜本的に変わったといえるレベルでの変化は実感できていない。

現時点で行われていることは、概ね社員が行うルーティン業務を機械に代替させる(RPA)というもので、新しい手法や仕組みが生み出されている状況ではないと思われる。どうしても自分がやっていることを前提に機械で自動化しようという発想になってしまい、技術がもたらす可能性を最大限活かし切れていないのではと考えてしまう。

どのように技術を活かすかを考える上で参考になるのは、People Analyticsの分野でよく例として取り扱われている、映画「マネーボール」である。

統計解析を野球選手のスカウトに活用し、勘に頼らずデータ分析の結果を用い、確率論的に自分のチームで活躍すると思われる選手をスカウトして結果を出したという内容である。統計解析を行うこと自体は従来とは大きく変わらないが、データ分析の結果を踏まえて意思決定を行うことの重要性を理解するには非常によい題材であり、変革すべきものが何かを明示していると思われる。

従来からある統計解析をデジタル技術を用いて効率的に実現することだけではなく、解析結果を基により高度な意思決定をするという思考メカニズムの変革であり、仕組みを作るだけでなく、それを利用する人に対するアプローチも同様に重要になってくる。私たち日本人は、リスクや不確実性に対して非常に敏感で、必要以上に慎重に物事を考え、判断する傾向がある。石橋をたたいて橋を壊してしまっているのではと自省してしまう。「創造的破壊」により、企業の競争力を高め、持続的な成長を実現していくために破壊すべき対象は、実は自分たちの凝り固まった考え方なのではないかと思う。

著者
磯部 浩也

    関連トピック

    関連インサイト