フィードバックにより環境変化にしなやかに対応する 

5月 13, 2020

組織は生き物のようだ、と言われることがあります。

事業を取り巻く環境は急速に変化しています。今、目の前に広がっている状況を1年前に想像することは難しかったのではないでしょうか。社会情勢の変化、市場や顧客の変化、ステークホルダーの様々な要請といったものに対して、しなやかに、したたかに対応していくことの重要性が高まっていると思われます。

生物は、進化の過程で環境変化にしなやかに対応する仕組みを備えました。そのひとつがフィードバック機構です。おおざっぱに言えば、システム(原因)によって生じた事象(結果)が、もとのシステムに影響を与えるしくみです。結果が原因に戻って影響するので、フィードバックと言われます。代表的なものは、血圧の調節やホルモン分泌の調節などでしょうか。組織という生き物も、フィードバック機構を活用し、結果から学び、柔軟に軌道修正していくことが、先行きが見えない環境で有効かもしれません。

フィードバックという言葉は、私たちの仕事でも使われており、何らかの成果に対して他者(一般的には上司)が良し悪しを伝える行為を指します。フィードバックは、仕事のパフォーマンスを向上させることに有効と言われていますが、フィードバックが盛んにおこなわれていると自社を評価している企業は多くはありません。マーサーの調査では、フィードバックの質・量が優れている“フィードバックリッチ”なカルチャーであると自社を評価したリーダーはわずか2%に留まっています

2019年グローバルパフォーマンスマネジメント調査

 

フィードバックリッチな組織がこれほど少ないという点は問題です。同時に、そもそも、組織の中で用いられるフィードバックが、一般に上司から部下という方向である点も気になります。フィードバックとは、「結果」が「原因」に影響を与えることで適応的な振る舞いを実現するしくみです。組織という生き物においてリードする役割を担うマネジメント層は、その実行の役割を担う部下が現場で目にしている情報を、どれだけフィードバックされているでしょう。不透明な状況で組織をリードしなければならない今、現場で起きている事実を素早く取り込み、迅速に意思決定することの重要性が高まっているのではないでしょうか。

もし今、組織の中で起こっていることについて十分なフィードバックを得られていないとすれば、上司に意見したが聞き入れてもらえなかった、あるいは敵対勢力だとみなされる等、損をした経験が積み重なり、本来のフィードバックを抑制するシステムが部下の頭の中に構築されている可能性があります。このシステムを組み替えるためには、部下に自身の行動や考えへのフィードバックを求める「フィードバック・シーキング」がひとつのきっかけとなるのではないかと考えます。「今、現場で起きていること、困っていることは何か教えて欲しい。」こう部下に声をかけることが、組織を変える端緒となるかもしれません。

著者
伊藤 靖弘

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