人事部門のグローバル化を阻害するもの 

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06 8月 2019

クライアントの人事部門の方とお話をする中で、海外進出が進み、事業部門のグローバル化は進んできているものの人事部門を含めた管理部門のグローバル化が進まないといったお悩みを伺うことがある。人事部門のグローバル化という言葉が曖昧であるため、ここでは、グローバルスタンダードの組織・人材マネジメントシステムが構築され、必要な情報が収集され、適切なガバナンスが出来ている状態を理想として、それらを阻害する要因とその対応を考えてみたい。

グローバル事業戦略を支える組織・人材マネジメントシステム構築の阻害要因

1. 言語能力の高い人材の不足
最も表面的な障害は、言語である。情報収集において、言語の違いによる障害が大きいことは敢えて説明する必要もなく、特に伝統的日系企業においては比較的リスキルが容易である若年層が少ないこともあり、大きな課題となっている。

2. 役割・権限の曖昧な組織設計
一定程度、海外進出が進んだ企業においては、人事部・労務部といった機能別組織の他にグローバル人事部といった組織を置くことが多く見られる。言語能力の高い人材を配置し、海外に関わる全てを集約する方法であり、一見すると効率的であるように見えるが、全ての権限を含めて移管がされないこと、周囲から業務が見えづらくなること、まだまだ日系においてはエース級の人材は国内人事に配置されるケースが多いことなどから発言権を得ることは難しく、グローバルスタンダードを社内に展開するにあたってもうまくいかないケースが多い。

3. 人材の同質性による受容度の低さ
個人的に最も障害となっていると想定していることは、人材の同質性による受容度の低さである。新卒一括採用から男性総合職中心、長期雇用で育った環境においては、強固なムラ社会が形成されており、リーダー(村長)の言うことには従順であるが、他者への受容度に関して極端に低くなる傾向が強い。グローバル化において、各ローカル人材・文化特性の理解は必須であり、日本人に対するようなマネジメントが通じないことは、読者の方々も何度も経験されているのではないだろうか。マイクロマネジメントやローカルの慣習を無視した一方的なルールを押し付けても、画に描いた餅で終わることは必至である。

対応の方向性

これらの阻害要因を取り除く対応として、リーダーの変革、人材の入れ替え等様々な手法が考えられるが、より即効性のある対応として、本社の機能別組織をグローバル化することが挙げられる。すなわち、人事異動であれば海外含めた全ての人事異動を、報酬管理であれば海外含めた全ての報酬管理を本社のCoE(Center of Excellence)として、管理監督する組織に改編することである。例え言語能力が低く、他者の受容度が低い人材・組織であったとしても、仕事として目の前に突き付けられれば対応せざるを得ないため、必然的に組織・人材のグローバル化は進むこととなる。当然、業務が滞るリスクや変化についていけない人材も多数出てくることは想定されるが、企業が存続し輝き続けるために、失敗を恐れず、まず変わってみることも考えてはどうだろうか。
著者
湯元 典誉

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