グローバル視点で考えるHRコスト削減・最適化と成長施策(第6回) ReturnからReinventへ:持続的な成長政策
03 12月 2020
感染爆発によって新たに加わった課題はあるが、いまの日本の重要課題のほとんどは、すでに感染爆発以前から重要課題であった。それが、感染爆発の経済的ダメージにより、いよいよ「待ったなし」になったところがポイントであり、あるいは、これまでは抵抗が強く、実施コストが高くついた構造が、感染爆発で臨界点を越えて力関係が変わり、いよいよ前に進められるようになったところがポイントである。
改めて、日本の立ち位置を確認したい。国連のデータを見ると、2018年の実質GDP上位20か国の中で、日本は過去25年間の一人当たりGDPの伸び(要するに生産性の向上)が大きく見劣りしている。例えば25年間の年平均成長率は、USの2.5%、UKの2.2%に対して、日本は1.0%である(図1)。わずか1.2%~1.5%の違い、と思う方もおられるかもしれない。しかし、25年間の長期運用ではこれは大変に大きな違いである。その他の国々も、軒並み2%台から4%台の高い成長である。
生産性を大きく向上するには、事業の選択や、事業の構造改革が特段に重要である。正しいことを正しく行うように事業を建て付ければ、あとは社員が普通程度に頑張ると、グローバルで見ても遜色のない収益と成長が実現する、という発想に立つことが大事である。そうしない限り、社員がどれだけ働いても、満足な業績が出ない。知恵と決断がもっとも求められるのはこの事業の建て付けにおいてであり、それは企業経営者とそのスタッフ、そしてそれを善導する取締役が果たすべき重要な役割である。
かねて指摘のある通り、一般に、日本企業は自主独立経営の気風が強く、また自社事業の売却には抵抗感があった。このため、合理性に立つ事業再編や経営統合の観点からは懸案があることが多く、見方を変えればチャンス(宝の山)があちこちに残っている、ともいえる。
具体的には以下の類型であり、最近の日本でも(かねて温められていたものを含めて)大型案件が続々と登場している。
- 有効な事業規模・事業内容の獲得、競争力強化
例えば、昭和電工の日立化成買収、AGCとセントラル硝子の国内建築用ガラス事業の統合、日立AMS・ケーヒン・ショーワ・日信工業の合併など - ノンコア事業の売却
例えば、日立製作所と武田薬品工業による一連の売却、LIXILグループによるLIXILビバ売却など - 完全子会社化による経営自由度の最大化
例えば、NTTによるNTTドコモの完全子会社化、日本ペイントによるアジアJVの完全子会社化、日立製作所による日立ハイテクの完全子会社化など - グループ内再編/組織統合/過去に実施したM&AのPMIの踏み込み
典型的には、事業や業績が企図したようには伸びずに、立案時の事業計画が未達に終わっていたところを、組織構造と幹部人事の改革によって打開を図るケースである。M&A取引と違い、詳細が公開されることはないが、生産性向上の観点から非常に大きくて、重要な取り組み領域である。
これらのような懸案に対して、今回、いよいよ踏み込むチャンスが到来しているのである。