コーポレートガバナンスとは?
現代のビジネスにおいて、企業の持続的な成長と社会的信頼を確保するためには、コーポレートガバナンスの高度化・充実化は不可欠なものとなっています。
近年、多くの企業不祥事が明るみになり、経済環境の不確実性が増大する中で、企業経営の透明性を保ち、ステークホルダーの利益を守るための仕組みがますます重要視されています。
では、コーポレートガバナンスとはそもそも何か、何を目的としてどのように強化すべきか、そしてどのようなトレンドを考慮すべきなのでしょうか?
内容
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- コーポレートガバナンスの定義
- 注目度が高まっている背景
- 「内部統制」との違い
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- 中長期的な企業価値の向上
- 中長期的な投資の促進
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- 役員報酬の透明性・業績連動性の確保
- サクセッション・プランの高度化
- 取締役会の実効性強化
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- 日本におけるコーポレートガバナンス
- 世界におけるコーポレートガバナンス
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- 持続可能性とESG
- デジタル化とガバナンス革新
- 多様性とインクルージョン
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- 荏原製作所
- 味の素
- セイコーエプソン
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コーポレートガバナンスとは?
コーポレートガバナンスの定義
コーポレートガバナンスとは、「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み*1」です。
*1:株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」(2021年6月11日)
コーポレートガバナンスは、1990年代のアジア通貨危機やエンロン事件を契機として、世界的に注目度が高まることとなりました。そして、2002年には米国で有名なサーベンス・オクスリー法(SOX法)が制定され、企業の透明性と説明責任が強調されるようになりました。
一方、日本では1990年代のバブル崩壊後にガバナンス改革が進み、2006年には「会社法」、2007年には「金融商品取引法」が施行されました。そして、2015年には「コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)」第一版が公表され、上場企業に対するガバナンス体制の整備が義務づけられるなど、日本独自の取組みが進化しています。
注目度が高まっている背景
コーポレートガバナンスの注目度が高まっている背景には、下記の3つが考えられます。
- 企業による不祥事の増加
- 株主の影響力・発言力向上
- 国内外における規制・指針の強化
まず、近年の企業不祥事や経営陣による不正行為の報告件数の増加に伴い、投資家や社会全体からの信頼を損ねるケースが増えています。これにより、企業が透明性を高め、適切な監督体制を整えるためのコーポレートガバナンスの重要性が再認識されています。
また、バブル崩壊以降の株式市場の規制緩和により、以前よりも株主が企業経営に対する影響力を強め、長期的な企業価値の向上を求める声が高まっています。特に機関投資家やアクティビストが企業のガバナンスに関与することで、経営の透明性や説明責任を強化する動きが進んでいます。
そして、国際的な規制やガイドラインが強化され、企業に対するコーポレートガバナンスのハードルがより高くなっています。例えば、後述するESG(環境・社会・ガバナンス)投資の拡大に伴い、企業はガバナンス面でも一定の基準を満たすことが求められるようになり、企業経営やそれに対する評価に影響を与えています。
「内部統制」との違い
内部統制 | コーポレートガバナンス | |
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範囲 | 企業内部の業務プロセス | 企業全体の経営 |
目的 | 不正防止、法令遵守、財務報告の正確性確保など
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不祥事の防止、ステークホルダーとの関係構築、企業価値の最大化など
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手段 |
内部監査、リスク管理体制、財務報告プロセスの整備など
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内部統制、取締役会・委員会の整備、実効性強化など
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内部統制が「企業が内部で定めたルールに基づいて業務を行うための仕組み」であることに対して、コーポレートガバナンスは、前述のとおり、企業全体の経営をカバーする、より広範な概念です。
両者の関係性を整理すると、内部統制は、コーポレートガバナンスを構成する要素の一つであり、法令遵守、財務報告などの個別具体的なアジェンダを扱います。他方で、コーポレートガバナンスは、ステークホルダーとの関係構築、企業価値の最大化という、より抽象度の高い概念となります。
なお、CGコードの【原則4-3.取締役会の役割・責務(3)】 では、「内部統制や先を見越した全社的リスク管理体制の整備は、適切なコンプライアンスの確保とリスクテイクの裏づけとなり得るものであり、取締役会はグループ全体を含めたこれらの体制を適切に構築し、内部監査部門を活用しつつ、その運用状況を監督すべき」とあり、内部統制の整備・運用が求められています。
コーポレートガバナンスの目的
コーポレートガバナンスの目的は、2015年に公表された「資料編:コーポレートガバナンス・コード原案」序文・各原則の〔背景説明〕(以下、CGコード背景説明)*2を参照すると、下記の2つに収斂されます。
- 中長期的な企業価値の向上
- 中長期的な投資の促進
*2:コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議「「コーポレートガバナンス・コード原案」序文」の〔背景説明〕(2015年5月13日)
中長期的な企業価値の向上
コーポレートガバナンスの第一の目的として、中長期的な企業価値の向上があります。CGコード背景説明では、「健全な企業家精神の発揮を促し、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることを主眼に置いている」と明記されており、「いわゆる「攻めのガバナンス」を目指すもの」としています。
また、一定の規律を求める記載が含まれているものの、「会社の事業活動に対する制約と捉えることは適切ではない」という旨を強調しています。仮に、ガバナンス不全の状況が生じれば、経営の意思決定プロセスの合理性が確保されなくなり、経営陣が、結果責任を問われることを懸念して、リスク回避的な方向に偏り、果断な意思決定・事業活動に対する阻害要因となる恐れがあるとしています。要は、会社に適切な規律を求めることにより、健全な企業家精神を発揮しつつ経営手腕を振るえるような環境を整えること、が狙いとなります。
中長期的な投資の促進
もう1つの目的として、中長期的な投資の促進があります。CGコード背景説明では、「市場においてコーポレートガバナンスの改善を最も強く期待しているのは、通常、ガバナンスの改善が実を結ぶまで待つことができる中長期保有の株主であり、こうした株主は、市場の短期主義化が懸念される昨今においても、会社にとって重要なパートナーとなり得る存在である」として、「中長期の投資を促す効果をもたらすことをも期待」しているとしています。
また、スチュワードシップ・コードに基づく株主(機関投資家)と会社との間の建設的な「目的を持った対話」によって、更なる充実を図ることが可能として、CGコードとスチュワードシップ・コードを「車の両輪」としています。
コーポレートガバナンスを強化する方法
コーポレートガバナンスを強化する方法として、下記の方法が挙げられます。
- 役員報酬の透明性・業績連動性の確保
- サクセッション・プランの高度化
- 取締役会の実効性強化
役員報酬の透明性・業績連動性の確保
コーポレートガバナンスを強化するためには、役員報酬の透明性と業績連動性を確保することが不可欠です。役員報酬において、企業のパフォーマンスと役員の貢献度が適切に反映されているか如何は、株主からの企業に対する信頼に影響する可能性が考えられます。
まず、透明性を高めるためには、報酬水準の設定方針から実支給額の決定プロセスまで明確化することが重要です。例えば、報酬委員会を設置し、独立した社外取締役が関与することで、公平性と客観性が担保されることが期待されます。
次に、業績連動性の確保には、企業の短期および長期の業績指標に基づく報酬制度を設定することが有力な方法となります。これにより、企業の持続的な成長に対するインセンティブが強化されることが期待されます。これらの取組みにより、役員報酬が公正かつ効果的に機能し、企業の信頼性と持続可能な成長を支えることが見込まれます。詳しくは「役員報酬とは?」もご覧ください。
サクセッション・プランの高度化
サクセッション・プランの高度化は、企業の持続的な成長と安定を支えるために重要な取組みです。経営陣の交代がスムーズに行われることで、企業は市場環境や内部変化に適応し続けることが期待されます。
まず、サクセッション・プランの高度化には、後継者の選定プロセスの精緻化が不可欠です。単に業績や実績に基づく評価だけでなく、リーダーシップ能力や企業文化への適応力も考慮することで、適切な後継者を選出することを企図します。さらに、次世代のリーダー候補が異なる部門や困難な職場(いわゆるタフ・アサインメント)で経験を積み、多角的な視点とスキルを養うようにサポートすることが重要となります。
次に、サクセッション・プランの透明性を高め、社内外のステークホルダーに対して計画の進捗や方針を共有し、計画に対する理解を促進することも重要です。
加えて、プランの定期的な見直しとアップデートも、環境変化への柔軟な対応という面から不可欠です。経済環境の変化に合わせて、後継者に求められるスキルや資質を再評価し、必要に応じてプランを修正することで、常に最適なリーダーシップ体制を維持することが期待されます。詳しくは「サクセッション・プランとは?」もご覧ください。
取締役会の実効性強化
コーポレートガバナンスの強化には、取締役会の実効性強化も不可欠です。取締役会は株主総会に次ぐ最上位の意思決定機関であり、その機能が適切に発揮されることで、企業全体の健全な運営が期待されます。
まず、取締役会の独立性を強化することが重要です。独立社外取締役を増やし、経営陣から独立した視点を取り入れることで、客観的かつ公正な意思決定を促進することが期待されます。また、社外取締役の専門性や多様性を高めることで、様々なリスクや機会に対する洞察が深まると多方面から指摘されています。
次に、取締役会の実効性を高めるためには、定期的な評価とフィードバックが欠かせません。取締役会の各参画者が自身又は他メンバーの役割と責任を明確に理解し、企業の戦略目標に対してどのように貢献しているかを評価することで、継続的な改善が図られることが期待されます。
さらに、取締役会の議論が活発に行われるための環境整備も重要です。運営事務局などからの適切な議題設定や情報提供に加えて、各取締役が自発的な情報取得に努めることにより、適切な議論の土壌を作り上げ、意思決定の質を向上させることが求められます。
これらの取組みにより、取締役会の実効性が高まり、企業の持続的な成長と長期的な価値創造に寄与することが期待されます。
日本と世界のコーポレートガバナンス
日本におけるコーポレートガバナンス
日本におけるコーポレートガバナンスは、近年急速な変革を遂げています。特に2000年代以降、企業の透明性と経営の効率性を高めるための取組みが強化されてきました。その中でも、前述した2015年制定のCGコード第一版は、その中心的な役割を果たしています。CGコードは、企業が取締役会の独立性を高めることや、株主との対話を強化することを求めており、これによって企業の意思決定プロセスの透明性向上を促進させてきました。
日本企業では、かつての終身雇用制度や年功序列型の経営スタイルから転換し、より柔軟かつグローバルな経営体制の実装が目指されています。具体的には、前述した独立社外取締役の招聘が進み、取締役会における多様性と独立性が強化されつつあります。また、企業が持続可能性やESG要素を重視する動きも加速しており、ステークホルダー全体に対する責任が強調されています。しかし、こうした変革の一方で、依然として企業内での意思決定プロセスの整備状況や、東京証券取引所が推進する「株価や資本コストを意識した経営」という面では課題が残っていると言われています。これらを克服することで、さらなるガバナンスの向上が期待されています。
世界におけるコーポレートガバナンス
世界におけるコーポレートガバナンスは、地域や国によって異なる特徴を持つものの、「株主資本主義」から「ステークホルダー資本主義」への転換が図られているのが一つの潮流です。1970年に経済学者のミルトン・フリードマンがニューヨーク・タイムズ紙に記載した「ビジネスの社会的責任は一つしかない。それは利潤を増やすことである」という一節に代表される株主資本主義の考え方がある一方で、1980年代の「エクセレント・カンパニー」、1990年代の「ビジョナリー・カンパニー」、2000年代以降の「ミッション・ビジョン・バリュー」や「CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)」、「CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)」等で言われるような「企業は、自社の短期的な利益のみを追求するのではなく、社会的な責任を果たしながら中長期的な企業価値創造を目指すべきである」というステークホルダー資本主義の考え方も古くからありました。この論争の中で、世界最大の資産運用会社である米ブラックロック社ラリー・フィンクCEOの2018年年頭書簡「A Sense of Purpose」で初めて「パーパス」という言葉が登場したのを契機に「パーパスをステークホルダーとの関係の基盤と位置付けることが、長期的な成功の鍵となる」という主張が、米国の主要企業が名を連ねるビジネス・ラウンドテーブルから賛同を得ることとなりました。2019年の声明では企業経営の原則としていた株主資本主義を批判してステークホルダー資本主義への転換を宣言、パーパスの実現を目指すべきと明確に記されるようになりました。
加えて、欧州諸国では、労働者の参画を重視したガバナンスを採り入れている国も見られます。例えば、独国・仏国では、労働者代表が取締役会に参加する「コーポラティズム」的なモデルが採用されており、企業の意思決定において多様な利害関係者の意見が反映されます。いずれにせよ、世界経済フォーラムが「ダボスマニフェスト2020」の中で、企業の普遍的な目的を「全てのステークホルダーを共有された持続的な価値創造に関与させることである。」と定義し、ステークホルダー資本主義の立場を明らかにしたように、ステークホルダー資本主義への移行が進展を見せています。
コーポレートガバナンスのトレンド
持続可能性とESG
近年、コーポレートガバナンスの枠組みにおいて、ESGの重要性が急速に高まっています。持続可能性が経営戦略における重要アジェンダに位置づけられるようになり、投資家や顧客からの注目度も高まっています。環境面では、温室効果ガスの排出削減や再生可能エネルギーの導入、社会面では、労働条件・環境の改善や従業員エンゲージメントの促進、ガバナンス面では、透明性のある意思決定プロセスと取締役会の独立性が注目されています。
また、国内外の諸機関からESG評価基準に係る枠組みが提供され、企業はESG視点の情報開示を求められるようになりました。これにより、企業は長期的な価値創造とリスク管理を同時に行う必要に迫られています。また、一部投資家はESG視点を重視するスタンスを明確化して、企業の持続可能な成長を求めるようになっています。持続可能性とESGの統合は、企業が短期的な利益追求を超えて、社会全体に対する責任を果たし、長期的な成功を目指すための新しいガバナンスのあり方を形成しています。
デジタル化とガバナンス革新
デジタル技術の進展は、企業のコーポレートガバナンスに新たな視点と手段をもたらしています。特にデータ分析、AIなどの先端技術は、取締役会や経営陣による迅速・果断な意思決定を支えるツールとして活用されています。データ・ドリブンの意思決定は、企業のリスク管理や業績評価の精度を高め、透明性を強化することが期待されます。
また、デジタル化に伴うサイバーセキュリティの重要性も増しており、企業はこれに対するリスク管理を強化する必要に迫られています。さらに、リモートワークの普及により、従来のガバナンスモデルが見直され、意思決定プロセスやコミュニケーションの手法が変化しています。この変革に対応するためには、新しいデジタルツールの導入だけでなく、それに伴うガバナンス体制の見直しと強化が求められます。デジタル技術の活用は、企業の競争力を高める一方で、ガバナンスの適切性維持と高度化のための新たなチャレンジも生み出しています。
多様性とインクルージョン
取締役会の多様性とインクルージョンは、コーポレートガバナンスの実効性を高める重要な要素として注目されています。企業の意思決定プロセスにおいて、多様な視点や背景を持つ取締役が参画することで、よりバランスの取れた議論・意思決定が期待されます。ジェンダーの多様性だけでなく、異なる文化的背景や専門知識・経験を持つメンバーが取締役会に加わることは、より複雑化する経済環境や社会的課題への対応をサポートすると言われています。
また、多様性を取り入れることで、企業のリスク管理が強化され、イノベーションが促進されると同時に、企業の社会的責任に対する取組みの高度化も期待されます。しかし、多様性を推進するだけでなく、取締役会のメンバーが効果的に協働し、インクルージョンを実現するための環境を整えることも重要です。これにより、取締役会は真の意味で企業の健全なガバナンスを実現し、長期的な成功を支える基盤となることが期待されます。
コーポレートガバナンスの先進事例
コーポレートガバナンスの先進事例として、「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」2023年度受賞企業*3(Grand Prize Company / Winner Company)をご紹介します。
- 荏原製作所
- 味の素
- セイコーエプソン
*3:日本取締役協会「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー®2023 受賞企業発表」(2024年1月11日)
荏原製作所
荏原製作所について、同審査委員 伊藤邦雄氏(一橋大学名誉教授)は、「監督の機能不全を機に、すぐに「守り」のガバナンス改革に着手。早くから独立社外取締役を入れ、指名委員会等設置会社に移行。その後に「攻め」のガバナンスに重点を移動。ROIC経営を導入し、知財ROIC、生産ROICにも発展させている。そのプロセスはまさに「Governance (to) Value」そのもの。経営もガバナンスも経営者の「ハンズオン」による実行力が成果を生んだ象徴的事例。」と評価しています。
同社は以下*4のようにセグメント別にROIC-WACCスプレッドの分析・評価を実施した上で、拡大施策を提示しており、企業価値向上に向けた要素をROICツリーを用いて分解し、具体的なプロセス・アクションまで落とし込んでいます。
*4:株式会社荏原製作所「2023年12⽉期第2四半期 決算説明会資料」(2023年8⽉14⽇)
味の素
味の素について、同審査委員長 斉藤惇氏(KKR Japan 会長、元日本取引所グループ社長)は、「組織が縦割りにたこつぼ化している現象を破壊するため、意識的に取締役会はもとより経営会議においても外部識者を招聘している。食品業界では珍しい指名委員会等設置会社として法定3委員会(指名、報酬、監査)を導入し、取締役会議長や各委員長は全て十分多様化された独立社外取締役で運営されている。WACCやROICを会社の特性に合わせて意識し、食品事業からアミノサイエンス系事業への展開が期待される。」と評価しています。
同社は以下*5のように、役員報酬の業績指標にも創意工夫が見られます。短期業績連動報酬で利益指標を追いつつ、中長期業績連動型株式報酬で経済価値(ROIC含む)・社会価値・無形資産強化の動機づけを行っており、社内外の広範なステークホルダーからの期待に応えようとする姿勢が覗えます。
*5:味の素株式会社 「ASVレポート(統合報告書)2023」(2023年8月末日)
セイコーエプソン
セイコーエプソンについて、同斉藤委員長は、「10名の取締役中過半の6名を独立社外取締役が占め、任意の指名と報酬委員会の長は社外取締役が担っている。同社の特徴はサクセッションプランの実行やガバナンスの実効性を上げることに工夫を凝らしていること。執行役員や執行役員候補者による経営会議で討議された中長期戦略などは社外取締役が閲覧可能で、組織的にサクセッション対象者が社外取締役の目に触れる運営がなされている。」と評価しています。
同社は以下*6のように、社外取締役を委員長とする取締役選考審議会を年17回開催して、社長の後継者計画やその他役員の選考方針・候補者案を綿密に議論している様子が覗えます。また、「取締役会の実効性確保に向けた取り組み」の中で、「経営陣の後継者計画・トレーニングに関する議論を深化させ、さらなる改善を図る」ことを課題に挙げているとおり、重点的に取り組まれています。
*6:セイコーエプソン株式会社「統合レポート2023」(2023年10月2日)