TOPIX100・日経225企業CEOの報酬水準等に係る開示状況の調査結果 

2023年度のCEO報酬水準は2022年度対比で増加 ー 標準額・支給実額の決定方法・計算式の開示は不十分、さらなる深化が望まれる

調査の目的

  • 昨今のグローバル市場を意識した報酬制度設計や経営人材の流動性の高まり等による役員報酬水準の高額化傾向を明らかにすべく、TOPIX100・日経225企業合計228社におけるCEO報酬の標準額・支給実額と構成比率を経年で確認する

  • CEO報酬の標準額・支給実額の決定方法・計算式の開示状況を明らかにし、その金額に至るプロセスが説得力高く開示されているかを検証する

  • 参考として、CEO報酬額と株式時価総額成長との関係性を確認する

調査結果1.  CEO報酬の標準額・支給実額・構成比率

【標準額

  • CEO報酬の標準額中央値は、2022年度の191百万円から2023年度で200百万円へと増加。特に90%ileでは、2022年度の489百万円から2023年の590百万円へと増加し、一部の企業ではグローバル水準(概ね5億円以上)に伍してきている

【支給実額

  • 役員報酬の支給実額中央値は、2022年度の128百万円から2023年度は141百万円へと増加。上記標準額の増加を受け、2024年度の支給実額は各社の業績次第ではあるもののさらに増加する可能性がある

【標準額の構成比率】

  • 標準額の構成比率を開示している企業は、2022年度では228社中158社(69%)、2023年度では165社(72%)

  • 標準額の構成比率中央値は、2022年度ではおよそ基本報酬:短期インセンティブ:長期インセンティブ=50:30:20、2023年度では同45:32:23。短期インセンティブと株式報酬を中心とした長期インセンティブを合わせた業績連動報酬比率が上昇して基本報酬比率を超える結果となっており、各社が企業業績と報酬支給額の連動性を高めてきていることが読み取れる

業績を100%達成した際の総報酬額(基本報酬+短期インセンティブ+長期インセンティブ)。CEOの支給実額及びCEOの標準報酬構成比率が開示されている企業(2022年度101社、2023年度108社)を母数として算出
名称としてCEOが設定されていない場合は業務執行のトップである社長の報酬を参照
中央値はTOPIX100と日経225企業の全228社を母数として算出。ただし支給実額が1億円に満たさず開示を行っていない企業も含まれるため、25%ile及び10%ileの具体的な金額は算出不可

 

参考1. CEO報酬の標準額・支給実績

  • CEO報酬の標準額中央値は、2022年度は191百万円から2023年度で200百万円と増加。特に90%ileでは2022年度の488百万円から2023年の590百万円へと増加している
  • 役員報酬の支給実額中央値は、2022年度の129百万円から2023年度は141百万円に増加している

注: CEO報酬の標準額はCEOの支給実額及びCEOの標準報酬構成比率が開示されている企業を対象とし、2022年は108社、2023年は118社。支給実額において開示のある企業は、2022年は155社、2023年は159社。1億円未満企業は開示を行っていないため、CEO報酬の支給実額の25%ile及び10%ileの金額は算出不可

 

参考2. CEO報酬の構成比率

  • CEO報酬の標準額の構成比率中央値は、2022年度ではおよそ基本報酬:短期インセンティブ:長期インセンティブ=50:30:20、2023年度では同45:32:23である
  • 2023年度では2022年度に比べて短期インセンティブと長期インセンティブを合わせた業績連動報酬比率が上昇している

 

注:基本報酬・短期インセンティブ・長期インセンティブの構成比率をそれぞれパーセント表示、小数点第一位を四捨五入して表示しているため、必ずしも合計は100%にならない

 

調査結果2.  CEO報酬の標準額決定方法や支給実額計算式に係る開示

【CEO報酬の標準額決定方法の開示】

  • CEO報酬の標準額決定時、ベンチマーク対象とする市場・業界・業績規模のいずれかを開示している企業は228社中56社(25%)に留まる。さらに、より具体的にピアグループの個社名・社数・基準とするパーセンタイルのいずれかまで言及している企業は6社(3%)であった。CEO報酬の標準額決定においてベンチマークを実施している記載はあるものの、比較先に関する具体的な記載がないため水準の妥当性に係る説得力は高いとは言えない

【CEO報酬の支給額計算式の開示】

  • 支給額の計算式の開示では、73社(32%)が業績目標値及びその実績値を併記し、当初目標に達したか否かについて示している。一方、インセンティブカーブ(業績目標値と支給率の計算式)を開示し、業績結果と支給額の具体的な関係性まで明らかにしている企業は37社(16%)と限定的であった

 

参考3. CEO報酬の標準額決定方法や支給実額計算式に係る開示(2023年度)

  • CEO報酬の標準額決定方法は、ベンチマーク対象とする市場・業界・業績規模のいずれかを開示する企業と、さらに具体的なピアグループの個社名・社数・基準とするパーセンタイルのいずれかまで開示する企業で合計28%である
  • 支給実額計算式は、業績目標値及びその実績値を開示する企業と、さらにインセンティブカーブを開示する企業で合計48%である

参考:CEO報酬の支給実額と株式時価総額との連動

  • 2022年度から2023年度におけるCEO報酬の支給実額成長率と株式時価総額成長率との連動を調査したところ、支給実額成長率と時価総額成長率との連動が一定認められる企業は91社(68%)であった。
     ⚪︎ 連動あり:91社(68%)
       ▪️ 時価総額(+)・CEO報酬(+):87社(61%)
       ▪️ 時価総額(-)・CEO報酬(-):11社(8%)
     ⚪︎ 連動なし:44社(33%)
       ▪️ 時価総額(+)・CEO報酬(-):36社(25%)
       ▪️ 時価総額(-)・CEO報酬(+):9社(6%)

各社の企業価値成長が、多くの企業におけるCEOの報酬支給額増加に反映されていることが伺える。これは、昨今の市場全体の株高影響もあると考えられるものの、各社の業績指標の設定やその達成に向けた役員の意識・行動、及びその結果としての業績・企業価値の向上、最終的な報酬への還元といった基本的なサイクルが機能していると考えられる。今回は単年のみでの確認ではあるものの、このような企業価値と報酬水準についての分析・検証を各社ごとに経年で行い変化を確認していくことは、役員報酬制度の更なる高度化及び投資家へのアカウンタビリティの充実に向けて意義深い取組みであると考えられる。

 各社の2022年度及び2023年度末時点の時価総額を参照。時価総額は(発行済株式数ー自己株式数)×各年度末日の終値株価にて計算

 

参考4. CEO報酬の支給実額成長率と株式時価総額成長率との連動

  • CEO報酬の2022年度から2023年度における支給実額成長率と時価総額成長率との連動を調査したところ、支給実額成長率と業績との連動が一定認められる企業(+・+または-・-)は98社(69%)ある
注:2022年度・2023年度でCEO報酬の個別支給額を開示している企業143社を対象。時価総額は(発行済株式数ー事故株式数)×各年度末日の終値株価にて計算。また、時価総額成長率・CEO報酬支給実額成長率のいずれかが150%を超過する企業(4社)に関しては、集計には含めるが上記プロットからは除外
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